ひのき枕

ひのき材チップを用いて「天然乾燥」した時と「人工乾燥」した時の香りが、
人の脳活動に及ぼす影響についての論文をご紹介します。

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木材の香りがもたらすリラックス効果

木材の香りがもたらすリラックス効果

飛騨フォレストの「ひのき枕」は天然乾燥にこだわっています。
現在では、森林から伐採した木材は早く柱として使うため人工乾燥を行っています。天然乾燥を行うと、乾燥に時間が掛かり柱として使えるまでに1年以上掛かるため、人工乾燥が一般的な方法です。また人工乾燥は反りにくいなど、建築材として向いていますが、「ひのき枕」は香りをお届けしたいと天然乾燥をしています。最初に7㎜の薄い板材にするため、飛騨の風で数週間で乾きます。天然乾燥にすると、香りやひのきの成分が残るメリットがあります。下記は、実際に天然乾燥と人工乾燥の違いについての実験結果になります。ひのきの香りはいいと皆さんご存知ですが、このような研究結果がわかると納得です。

木材の香りがもたらすリラックス効果
   -生理指標を用いた再発見-

木材は、古くから建築材料として使用されており、その香りは多くの人に親しまれている。しかし、木材の香りが人にもたらす影響に関しては、アンケート等の主観評価による検討が中心であり、生理指標を用いた科学的・客観的データの提出が待たれている。そこで、木材の香りがもたらすリラックス効果に関して、脳活動ならびに自律神経活動を指標とし、定量的に明らかにした。

活動内容

一般に、木材は変形や収縮を防ぐため、乾燥してから使われる。その手法としては、自然乾燥を待つ「天然乾燥法」と熱処理による「人工乾燥法」がある。本研究では、ヒノキ材チップを用いて、製材後45ヶ月間「天然乾燥」した時と120℃にて「高温乾燥」した時の香りが、人の脳活動に及ぼす影響を調べた1)。生理指標は、近赤外分光法による脳前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度を用いた。その結果、酸素化ヘモグロビン濃度は、「高温乾燥」チップでは変化は認められなかったが、「天然乾燥」チップでは低下することが示された(図1)。これにより、揮発性の高い香り成分が残る「天然乾燥」したヒノキ材チップは、人の脳活動を鎮静化させることが明らかとなった。さらに、木材由来の主要揮発成分であるD-リモネンの香りが、人の自律神経活動に及ぼす影響を調べた2)。生理指標は、心拍変動性による交感・副交感神経活動および心拍数を用いた。その結果、D-リモネンの香りは、リラックス時に高まる副交感神経活動を昂進させ、心拍数を減少させることが明らかとなった(図2)。
以上より、経験的に知られていた木材の香りがもたらすリラックス効果について、生理指標を用いた「再発見」がなされた。本研究の成果は、ストレス社会に生きる現代人の「生活の質(QOL)」の向上に寄与すると思われる。

 

■ 関連情報等(特許関係、施設)
関連論文
1) Ikei H et al. “Comparison of the effects of olfactory
stimulation by air-dried and high temperature-dried
wood chips of hinoki cypress (Chamaecyparis obtusa)
on prefrontal cortex activity.” J Wood Sci 61(5):537-540,
2015.
2) Joung D and Ikei H et al. “Physiological and
psychological effects of olfactory stimulation with
D-limonene.” Adv Hortic Sci 28(2):90-94, 2014.

■参考論文
池井晴美(森林総合研究所 構造利用研究領域)木材の香りがもたらすリラックス効果