ひのき枕

飛騨フォレストの「ひのき枕」は天然乾燥にこだわっています。
天然乾燥と人工乾燥の違いについての実験結果をご紹介します。

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木材の見た目やにおいが与える影響

木材の見た目やにおいが与える影響

人は木の色や香りに「いいな」「ほっとする」という感じを受けるようです。私たちはそのような「木から受ける感じ」を科学的なデータで裏付けることにより、木の良さをもっと発揮できるような使い方ができないかと考えて研究を行っています。
これまでに20 代の男性を対象とした実験で、木の見た目やにおいが快適で鎮静的な印象を与え、血圧や脈拍数を低下させるなど、体をリラックスさせることがわかってきています。本研究では測定上の難しさからこれまであまりデータの取られてこなかった女性や赤ちゃんを対象として、木が与える影響を測定することができました。

木材から受ける「感じ」

身の回りにはテーブルや本棚、床や壁など、木で作られたものがたくさんあります。そう思って見渡すと、人間はずいぶんと木が好きなのだなと思えてきませんか?どうも人は木の色や香りに「いいな」「ほっとする」という感じを受けるようです。私たちはそのような木から受ける「感じ」を科学的なデータで裏付けたいと考えて研究を行っています。

人を測る

さて、どうすれば人の「感じ」をデータにできるでしょうか?私たちは木材を見たり、そのにおいを嗅いだりしたときに、人の体がどのように反応しているかを測ろうとしています。人間の体は外界の変化に対して常に変化しながら対応しています。脳は外の変化を察知すると、脳から各器官につながっている自律神経(意志とは無関係に体を調整する神経)を使って指令を伝えます。ストレスを感じると、脳から心臓や血管に指令が送られ、心拍数や血圧が上昇します。これは全身に血液を送り戦いに備えるためだと考えられています。逆にリラックスしているときは各器官を休ませるので心臓はゆっくり動き、心拍数や血圧が下がります。さて木を見たり、木のにおいを嗅いだりするとどうなるでしょうか?

木目を見ると

木目模様は同じで色の濃淡が異なるシートが正面・左右の3 面に貼ってあるブースを作りました(図1)。比較用に白いシートを貼ったブースも入っています。これらのブースに20 代の女性被験者に1 人ずつ入ってもらい、壁を静かに眺めてもらいました。全部で20 名の測定を行ったところ、各ブースを「鎮静的」であると感じた人たちでは、「覚醒的」であると感じた人たちより副交感神経系活動が高く(図2)、逆に交感神経系活動は低くなっていました。自律神経のうち交感神経はストレス時や活動時に動きが高まり、副交感神経はリラックス時や睡眠時に高まります。この結果が示すのは①同じブースでも人によって反応が異なる、②「落ち着く」と感じているときには体も落ち着いている、③自律神経活動の測定により木目への反応を捉えることができそうである、という3 点であるといえます。

木のにおいを嗅ぐと

生後1 ~ 4 ヶ月の赤ちゃんに木のにおい成分であるα-ピネンのにおいを嗅いでもらいました。2 分間安静にした後に2 分間においを嗅いでもらったところ、赤ちゃんの心拍数が安静時よりも低下することがわかりました(図3)。比較のために無臭の空気も嗅いでもらいましたが、心拍数に変化はありませんでした。これまでに大人を対象とした実験で、α- ピネンなど木のにおいが血圧や脈拍数を低下させることを明らかにしてきました。これは体が「リラックスした」状態になっていると解釈されますが、赤ちゃんも大人と同じように木のにおいで「リラックス」していたことがわかりました。木目を好きな女性は木を見るとリラックスし、赤ちゃんも木のにおい成分でリラックスすることが科学的データからも明らかになりました。家の内装や身の回りにもっとたくさんの木を使って、人の心身の健康に役立てることができるよう、木の良さを科学的に説明するための研究を引き続き進めていきます。

「木の見た目」の研究は大日本印刷( 株) との共同研究、「木のにおい」の研究はピジョン( 株) との共同研究の成果です。また「木のにおい」は科学研究費補助金「嗅覚刺激に対する乳児における生理反応の経時変化」により行いました。

▲図1 色の違う木目模様のシートを貼った「ブース」
高さ約2.1m、幅約0.9m のブースを作成し、女性被験者に中に入って
壁面を眺めてもらいました。

▲図2 各ブースにおける「鎮静群」と「覚醒群」の副交感神経系活動
各ブースの壁面が鎮静的か覚醒的かを答えてもらったところ、鎮静的であると答えたグループは、覚醒的であると答えたグループよりも副交感神経系活動が常に高いという結果でした。副交感神経系活動は、リラックス時や睡眠時に高まる神経活動です。この結果は壁面が鎮静的だと思っているときに、体も鎮静的な方向に動いていたことを示しています。

 

▲図3 α- ピネンと空気のにおいによる赤ちゃんの心拍数の変化(*は統計的に有意な差があったことを示す)
安静を2 分取った後ににおいを2 分嗅いでもらい、最後に再度2 分の安静を取りました。α- ピネンのにおいで心拍数が低下しました。これはα- ピネンのにおいが赤ちゃんを「リラックス」させたと解釈されます。空気のにおい(無臭)では心拍数の変化はほとんどありませんでした。

■参考論文
恒次祐子(森林総合研究所 構造利用研究領域)木材の見た目やにおいが与える影響